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ただタピオカが飲みたいだけなのに

原宿を散歩していたら、人が行列を作っていた。嫌味ったらしく先頭を確かめると、そこにはタピオカ屋があった。「そんなにタピオカって飲みたいもんかね?」と、これもまた嫌味ったらしく隣にいる友達に呟いて、新宿方面に歩いていった。

 

新宿に着いて、私たちは歩きながら川柳をよんでいた。「しょんべんの においがしみつく このとおり」「いまのひと あやせはるかに にてたよね」

文化的な教養とかじゃなく、暇すぎるあまりのふざけた句会。それでも不思議なことに、自分の気持ちや感情の機敏と対峙できることに変わりはない。友達をちょっと笑わせられたら満足な遊びなのに、次の句を頭の中で考えれば考えるほど、心の中の自分の声が明瞭になってくる。

 

ほんとうは タピオカのれつに ならびたい

最後まで口には出さなかったけれど、ずっとこれが頭の中にあった。消しても消しても、「タピオカの れつにほんとは ならびたい」などと、形を変えて現れてくる。これを言ったところで、べつにおもしろくないし。いや、今まで言ってきた川柳もどきがおもしろいかと言われたら、そうは思えないけれど。これはおもしろさというよりも、現実的な欲望で、それが口にしたときの恥ずかしさの原因になっていた。

 

いつのまにか折り返して渋谷に着いていて、歩きすぎて足も疲れたし、友達と別れて電車に乗った。郊外に住んでいるから、最寄駅まで30分くらいかかる。その間にいつも余計なことを考えてしまう。余計なことを考えることが日課でもある。今日は、タピオカの流行についてだった。

 

流行っているものに食いついた一番古い記憶は、だんご三兄弟のCDを買ったときだ。あれは、不覚だった。分別がついていないときだったし。その後は、ミニモニとe-Karaとウィルコムくらいだ。e-Karaは今でも使っているから流行りにのったわけじゃなくて普遍的なものかもしれないし、高校生の時「コム持ち」というのが流行っていたウィルコムに関しては、契約したものの電話する相手がいなかったのですぐに解約してしまった。よって、しっかりと流行に乗ったのはミニモニだけだ。

 

私は、流行ってるものを素直に良いと思えない。みんなが良いと思っているものを自分も揃って良いと言ってしまっては、世界のバランスが崩れてしまうんじゃないかと思っている。だから、なるべくマイノリティの意見側にいて、世界の均衡をとっているのだ。私の健気な努力のおかげで、この世界は崩壊せずに済んでいます。

 

インスタ映えが流行ったときは、「インスタ映え台無しマシーン」を作った。

 


日本人発明家がインスタ映えから世界を救う【2/16 ニュースM特集】

 

インスタ映えするものを撮ろうとすると、どうしても指が写り込んだダサい写真になってしまうマシーンだ。これで世界はそのままでい続けられる。

 

しかし、そんな努力家にしか分かり得ない心労がある。それは、好きなものが流行ってしまったときだ。流行に唾を吐くように生きてきたから、好きなものが流行ったときには大きな矛盾に陥ってしまう。

 

それが、いま、タピオカで起きているのだ。私はタピオカがすごく好きなんだけど、あの行列を見たら、「好き」なんて口には出せない。私がタピオカの行列に並んでしまったら、秩序が乱れてしまう。私はタピオカのアンチでいなければならぬ。

本当は誰よりも、新元号がタピオカになればいいなって、タピオカ元年の幕が上がればいいなって思っていたんだけれど、やっぱりそんなこと口には出せない。出しちゃダメなんです。

 

その反動で、私はタピオカの行列を嫌味ったらしく確認したりしてしまう。私も、その列に並べる側の人間に生まれたかったわ……。うわあ。また嫌味ったらしい言葉がでてきた。でも、ほんとうに、自分を覆うくだらない自意識のせいで、流行すら素直に楽しめないなんて。どこかでこの自意識と決別しなくては、とは思っているものの、やっぱり私はタピオカの行列に並ぶことはおろか、コンビニでタピオカ飲料を買うことも、アメ横の地下街でタピオカの素を買うことすらできないのだ。

 

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流行りが過ぎ去ったのを察知してから、それを試す。でも、それをしていると、人が通った道を遅れて歩いている虚しさみたいなものを感じる。シンゴジラを遅れてみたときは、SNSで盛り上がっている元ネタが分かった喜びと、そのころにはみんなバーフバリの話をしている虚しさがあった。

 

電車の中で、インスタグラムのストーリーを見ていた。フォローしている人たちが、こぞってタピオカの写真をアップしている。「近所にできたから、逆に並んで買ってみた(笑)」「おじさんだけどタピオカ買ったwwww」「買ってみたけど、これで700円とか高すぎ」とコメントが添えられていた。

素直じゃねえなこいつら。黙ってタピオカ飲めねえのか。そう思うと、私だけは素直にタピオカを買わなくてはならない。そんな気持ちになってきました。せまい世界で自意識と共に生きてくほかありません。WANIMAの写真に他意はありません。